サムライスピリッツ イン 台湾
台湾と日本を行き来する機会が多い私は、スターアライアンスをよく利用する。
台湾、日本間のスターアライアンス航空会社とはいえば、全日空とエバー航空機だ。
最新のCNNの世界の航空会社ランキングの第3位に全日空、第8位に台湾のエバー航空が名を連ねている。
1989年の設立以来、重大事故を起こしていないことが評価されている。
このエバー航空の創立者、長島 發男氏は日本国籍だったこともある、「大の親日家」だったことをご存知だろうか。
1927年、台湾が日本統治時代に、船大工の父親のもとで生まれ、父親の仕事について、台湾の澎湖島、基隆、蘇澳を転々としながら、幼少期を過ごしたという。
同氏は、中国、台湾の企業幹部に絶大な人気をほこる、稲盛和夫氏の、他人に尽くす「利他」の精神に非常に近い考えかたをお持ちの方である。
1968年、長島 發男氏、通称「HATSU」さんは、15年物の中国の船を日本から購入し、エバーグリーン海運を創業する。
まさに自転車創業で船手をした同氏だが、創業当時から、先を見据えビジネスのビジョンを明確に持っていた。
創業当時、取り扱う貨物の種類もこだわりなく雑多な積荷船から、効率よく荷を輸送出来るコンテナ船への事業展開や、取り扱う航路も利益率の低い中東線から、欧州線へと移行することで「世界ナンバーワン」の海運会社を目指したのだ。
中古船たった一艘で船出をし、今では世界第4位のコンテナ物流企業と成長させた、まさに海運王である。
東日本大震災後の被災地には、個人名義で10億円を寄付したことでも知られている。被災地の動画を観ては涙されたそうだ。
自ら船長として動物的な感性を信じ、大海原で船が転覆すりやもしれない嵐を何度もくぐってきた、まさにワンピースの主人公「ルフィー」を彷彿とさせる人だったのではないだろうか。
2016年1月20日、88歳で亡くなられた同氏は、日本と台湾の経済の架け橋として尽力されたことを評価され旭日重光章も受賞されている。
「船の操船は、会社の操業に非常によく似ている。生前、よくお話されていた言葉だという。
時代の背景があったとはいえ、海運出身の実業家としてここまで大きな組織になった例は世界のなかでも非常に稀だ。
明治維新のころの日本の勢いにならい、武士道の精神を持って走り抜けたサムライと、一度でもいいからお目にかかってお話を伺うことができたていたら、なんてたわいもないことを考えて家路についた。